鑑定士と顔のない依頼人(2013, ジュゼッペ・トルナトーレ)

オークションを仕切る美術品の鑑定士として名を馳せる、ヴァージルという男が主人公のミステリー。ヴァージルは天才的な鑑識眼を持つと評され、鑑定士として活躍してきた。しかし、プライベートでは女性恐怖症で、肖像画の中の女性しか愛せないという困難を抱えている。ある時、資産家の両親を亡くした女性から、両親が残した美術品を鑑定してほしいという依頼を受ける。女性の家を訪ねると、女性は対人恐怖症で、壁の向こう側からしか会話できないという。ヴァージルは鑑定のために女性宅への訪問を重ね、すぐそばにいるのに会えないという状況で女性とのコミュニケーションを続けるうちに、女性への思いを募らせていくが、物語の終盤に予期せぬ出来事が起きる。

美術品というフレーム(額縁)の中の世界にだけ精通してきたヴァージルは、フレームの外の世界に対してあまりにも無垢だった。ヴァージルが翻弄されるプロセスを見ながら、昨日のレビューで紹介した社会学者のゴフマンの提唱した概念「フレーム(frame)」についてもあらためて考えると、ますます面白くなる。