ウィスキー(2004, フアン・パブロ・レベージャ&パブロ・ストール)

昔、暮らしていたアルゼンチンの首都ブエノスアイレスから、観光船に2時間ほど乗ってウルグアイの小さなまちに出かけたことがある。ラプラタ川沿いのコロニア・デル・サクラメントというまちだ。スペインとポルトガルに占領されていた時代があり、さまざまな建築のスタイルが見られる。この街並みは、ウルグアイで唯一の世界遺産に指定されている。大都市ブエノスアイレスとは異なり、時間の流れが穏やかで、治安の心配をしないで過ごすことができた。

本作は、そのウルグアイで生まれた映画で、コロニア・デル・サクラメント感じた空気で満たされている。大都市の生活者から見れば時代遅れにしか見えない、古い靴下工場が舞台だ。工場長ハコボと工場を支えるベテランの女性従業員マルタが、離れて暮らしていたハコボの弟が訪問してくるにあたって、偽の夫婦を演じるという話だ。映画のタイトル「ウィスキー」は、写真を撮る時の合図「チーズ」の代わりに、南米で使われることばだ。偽の夫婦は記念写真を撮るとき、「ウィスキー」と言って微笑む。毎日同じことを繰り返しているように見えたハコボとマルタの工場を中心とした暮らしに、彩りが加わっていく。こういう地味だけど味わい深い映画がとても好きだ。