転々(2007, 三木聡監督)

自分で言うのも変だが、私は感情が乱れるということがあまりないほうだと思う。が、そうは言っても、いろいろ重なると、ごく稀に、気持ちがざわざわしたり、むしゃくしゃしたりすることがある。年度末でいくつもの締め切りが目の前にあるせいか(なのにほかの大事だと思うことに時間を使った)、低気圧のせいか、自分の体調の問題か、そのすべてが重なり合ってか、今朝はそのごく稀に起こる感情の乱れを感じている。本作は、そういうときに観たくなる映画だ。

借金を抱えるさえない大学生と、あることをしでかした中年の借金取りの男。どうしようもないふたりの男が、どん詰まりの状況で、なぜか一緒に東京のまちをぶらぶら散歩する。まちで出会う風景や人びとが、ふたりの記憶や思いを刺激する。心がほぐれていく。散歩をしたからと言って、現実が大きく変わるわけではないのだが、現実を見る自分の心の状態が変わっていく。ゆるゆるしているようで、大事なことを気づかせてくれる映画だ。