アノマリサ(2015, チャーリー・カウフマン&デューク・ジョンソン監督)

既視感ゼロの、極めて不思議な作品だ。「ふつう」に、俳優が演じている映画だと思って観始めたら、人形と模型を使ったストップモーションアニメだった。

ストーリーは、ビジネス書の著者としてそれなりに成功している中年の男が、講演会のために訪れた街のホテルで1泊した時に経験した出来事だ。結婚し子どもができ、仕事もうまくいっているにも関わらず、生活のすべてに嫌気がさし、満たされない思いを抱える中年の男の〈生活世界〉をビビッドに描いている。人間の表情の微細な変化や、空間を構成するひとつひとつの要素の質感まで、あまりにも精巧な表現に目が離せなくなる。意図的に、リアルさと違和感を感じさせる表現を見事に使い分けている。CGを使わずに一コマ一コマ、人形と模型を動かして制作したという。完成までに3年間を要したそうだ。制作者の執念に圧倒される。