ありがとうの拍手(2013, Fajar Abadi RDP)

本作は、現在森美術館で開催中のサンシャワー:東南アジアの現代美術展に展示されている。地域で起きている問題に対して、アートは何ができるのかをアーティストが自ら考え、人びとに参加を求めながら問題に対してアプローチする、ソーシャリー・エンゲイジド・アートの実践のひとつである。インドネシアでは、通学や通勤の手段として乗り合いバスが使われるが、運転が荒く、サービスの品質が低いことで知られている。その背景には、運転手が置かれている労働環境の質や給料の低さがある。アーティストのFajar Abadi RDPは、次のようなプロジェクトを実施した。乗り合いバスを貸切り、仕掛け人が乗り込み、客が入ってきたら笑顔で迎え入れ、無料で乗車させ、みんなで歌を歌い、降りる時にはみんなでありがとうの拍手をして、チョコレートを差し出す。乗客に、乗り合いバスに対する見方を変えるような体験をしてもらう。サービスの担い手と使い手の対話を生み出し、お互いにとって良い道を探っていくようなきっかけを作ることを目的としているようだ。このプロジェクトの記録映像を見ると、いつも変わらないと思っている日常にちょっとした介入をするだけで、人びとの生活の質を変化させることができるのかもしれないと希望を感じる。