お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ(1975, 和田誠)

先日訪れた芸術祭「松戸アートピクニック」の開催場所「21世紀の森と広場」の中のイベント会場に来ていた、BOOK TRUCKでこの本を見つけた。BOOK TRUCKは、行く先々に合わせて、その都度品揃えや形態が変わるフレキシブルな移動本屋だ。以前から気になりながら、なかなか出店先に行くことができなかったが、ようやく出会うことができた。新刊書も置いてあったが、1点しかない古書や洋書がどれも魅力的で、その品揃えを見ているだけで楽しかった。その中で特に惹かれたのが本書だ。

本書は、イラストレーターの和田誠氏が、さまざまな映画のセリフを取り上げ、それにまつわるイラストとエッセイを書いた連載記事をまとめたものだ。調べてみるとシリーズ化されて、全7巻出ているようだ。私が手に入れたのは、1975年に出版された1巻目で、紹介されている映画のほとんどは観たことのない古い映画だった。観たことのない映画を、ひとつのセリフを入り口に知るというのも楽しいものだと思った。あとがきに、和田誠氏がこの企画を受けるかどうかためらった末に思ったことを書いているのだが、その中に印象的な文があった。

セリフを語ることが映画のすべてを語ることにならないことはもちろんだが、セリフもまた映画の重要な要素であることも事実であると考えたこと。それにセリフを語ることで完結してしまうのではなく、それを取っかかりにして話を拡げていくのも可能だろうと思った。

映画の「批評」のひとつの実践方法としておもしろいと思った。そして同じ方法を、書籍7巻分になるほど継続したということに圧倒された。