イリュージョニスト(2010, シルヴァン・ショメ監督)

美しい絵画の連なりを観ているような作品だった。セリフはほとんどなく、絵と音で感情を強く揺さぶるストーリーが表現されていた。主人公は高齢の手品師で、活躍の場がなく、パリの場末の劇場や酒場を転々としながら生活していた。ある時、スコットランドの離島の酒場で仕事をしていた時に、彼の手品を「魔法」と信じる少女と出会った。少女は、離島での仕事を終えてエジンバラに向かう彼と一緒に、旅をすることにした。彼は少女を喜ばせるために、手品以外の仕事もして金を稼ぎ、少女が欲しがるものを買い与えた。少女は、次々に願いを叶えてくれる彼を、「魔法使い」だと思い喜んでそばにいた。親子のように互いを慕い、思う、ふたりの関係が揺らいでいくプロセスが描かれている。物語の舞台は1950年代のヨーロッパだが、作品の中で描かれているふたりの人間関係や感情の移り変わり、自分の働き方・生き方を見つめ直す手品師の姿には、時代を超えて共感・共振する。