場所感の喪失〈上〉電子メディアが社会的行動に及ぼす影響 (2003, ジョシュア・メイロウィッツ)

原著が書かれたのは1985年なので、本書に書かれているのは30年以上も前の議論なのだが、今読んでも多くのことを学び、考えさせられる。買ってから何年も放置していたが、もっと早く読めば良かったと思う。本書では、当時新しかった電子メディアという存在が、社会的状況をどのように再構成するかを論じている。印刷メディアと電子メディア、それぞれのメディアが作り出す社会的状況の差異に関わる主要な問いとして、以下の3点が挙げられている。

  1. あるメディアは、異なる人々を、異なるもしくは類似した情報世界にどの程度まで分断、もしくは結合するか?
  2. あるメディアは、人々のインフォーマルで私的な「舞台裏」行動とフォーマルで公的な「舞台上」行動との区別をどの程度まで可能にするか?
  3. あるメディアは社会的状況と物理的位置取りの伝統的関係をどの程度まで支えたり弱めたりするか?

印刷メディアしかなかった時代、人々のコミュニケーションは、「旅すること」と連動していた。誰かとコミュニケーションするには、どちらか/双方が移動して同じ場所に居合わせる必要があった。電子メディアの登場によって、情報的移動と物理的移動は分離され、情報と経験はあらゆる場所からあらゆる場所へと移動可能になった。そのことの意味を考える上で、本書は必読書と言えると思う。