『哲學』第138集(2017, 三田哲学会)

岡原正幸先生ら慶應義塾大学アートベース・リサーチのチームによるアートベース社会学・パフォーマティブ社会学の宣言と、方法論、これまでの実践についてまとめられた論文集だ。冒頭の岡原先生によるマニフェストは私の研究にとって大変重要な内容だ。岡原先生は「人間を全体として理解することは、一つの正しい解答や記述や提言を見出すことではない。なぜなら人間は生ある限り、つねに変化し、状況に応じた姿をその都度で見せるからである」と述べ、人間の全体への接近を目指す、アートベース社会学を提言している。私の博士研究の映像作品『移動する「家族」』においては、作品を観た人が、対象者が生きる「トランスナショナルな生活世界」に接近し、彼/彼女の経験に参加し、「家族」について多様な解釈をすることを促したいと考えた。そのために有用な方法として、ビジュアル・アートのひとつであるドキュメンタリー・フィルムの方法を援用した。アートベース社会学の中に位置づけ、今後の展開を議論していきたいと思っている。