TAKING CHANCE 戦場のおくりびと(2009, ロス・ケイツ監督)

淡々と言葉少なに静かに進行していくけど、目が離せなかった。日本では世界で起きている紛争や内戦を身近に感じることはない。しかし、各地に軍を送り込んでいるアメリカでは、「戦死」は遠い国や遠い昔の出来事ではなく、現在でも軍隊で働く身近な人びとに起こり得ることだ。本作では戦死した兵士の遺体が、戦地から家族の元に帰るまでの一部始終を見届ける任務を遂行する海兵隊員の姿を描いている。実話にもとづいた作品だ。戦死した人の遺体は、最大限の敬意を持ってあつかわれる。「国のために」職務を全うした兵士は「英雄」として、あらゆる人から哀悼の意を表される。みんながその命の尊さを認めて悲しむ。それほどまでに大切な命なのに、なぜ、人は戦争を起こしたり、戦争に参加したりするのだろうかと、やりきれない気持ちになる。ただひとりの「遺体」の移送についての物語の中に、人間の社会をめぐる大きなテーマが横たわっている。