フィールドワーク2.0―現代世界をフィールドワーク (京都文教大学文化人類学ブックレット)(2013, 佐藤 知久)

本書では、マリノフスキーに代表されるような伝統的なフィールドワークを「フィールドワーク1.0」とし、その後の現代世界の変化とフィールドワークをめぐる反省と議論の変遷をふまえた新たなアプローチを「フィールドワーク2.0」としている。

フィールドワーク1.0は、文化・領土・民族を三位一体であると考え、個々人を一定の枠組みの中に帰属し、行動するものと見なしてきた。ある「島」や「村」といった地理的な境界のあるコミュニティの中を調べれば、その全体性の中で生きる個人のことも理解できるという見方だ。しかし、アーリの『モビリティーズ』の議論に代表されるように、人もモノも金も情報もあらゆるものが枠組みを越えて移動する世界は、フィールドワーク1.0のやり方ではとらえきれなくなっている。グローバル化、メディア化、個人化が進む世界でのフィールドワークはどのように実践すればいいか。本書ではフィールドワーク2.0を提案している。要点のひとつとして挙げられているのが「個々人の生活に着目する」ことだ。私が持ち続けてきた問題意識と実践と重なる内容で心強い。フィールドワークについて学びたい人には、ぜひ読んでほしい1冊だ。