日本生まれでイギリス育ちのイギリス人、カズオ イシグロによる小説。現代は Never let me go.
「介護人」をしている31歳の女性、キャシーが現在の仕事を振り返るところから始まる。子ども時代をすごした全寮制の「ヘールシャム」での暮らし、ヘールシャムを出た後の生活、介護人としての仕事がどのようであったか、一人称の視点で少しずつ明かされる。きっと無邪気で幸せな子ども時代だったのだろうなどと思って読み進めていくと、よそよそしさや不自然さ、消えることのない緊迫感が漂っていることに気づく。そしてそれは、彼らに親がいないことや、「提供」という、物語の要所に登場する言葉と関わっているらしいことが分かる。
著者がテレビ番組で本作について語っていたのを聞いたことがある。「コンセプトがあれば、作品は時代物でもSFでもよい」といったようなことを語っていた記憶がある。本作はWikipediaでは「SF小説」として紹介されていたが、僕は「SF」というタグをつけることをためらってしまった。SF的な要素は多分に含まれているし、確かにSF小説だと思うけれど、どんな読み方をしてもいいのだ。春にまた読もうっと。