塵クジラの海(2004,ブルース・スターリング)

ブルース・スターリングが1977年に発表したInvolution Oceanの日本語版(小川 隆 訳)。

Involution とは、もつれさせる[複雑にする]こと、もつれた[複雑な]もの[こと] を指すらしい。原題を直接訳すならば「もつれた海」といった感じになるだろうか。主人公のニューハウスは仲間とともに、薬物中毒におちいっている。この薬物が違法になったことから、その原料をもとめて水無星(みなほし)という惑星に旅立つ。水無星の海は、水ではなく塵でできている。その塵の海に生息しているのが塵クジラ。新しい仲間とともに「ラングランス号」に乗り込み、この巨大生物を追って航海の旅に出る。仲間の中には、翼を持つ魅力的な異性人ダルーサも含まれていた。

大学でジャーナリズムを専攻し、科学記者になろうと考えていた著者は、物理学、気象学や生態学を学んでいた。そのためか、惑星の地理や船内の様子、異性人の描写が具体的で、見たことがないはずなのに説得力があるように思える。例えば初めてラングランス号を見たときの様子はこんな感じ。

「ラングランス号はこのてのものとしては典型的な船だった。捕塵鯨三胴船である。長さ31.5メートル、最大幅27メートル。水無星には木がないので、ほぼすべてが金属製だ。金属製の船体三つは塵海の研磨作用によってつねにピカピカに保たれている。」(p.32)

“Go for detail.” あるテレビドラマシリーズで、文学部の教授が学生に言っていた言葉を思い出した。

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